vol.21 楽しい部活動 -微小貝部-

会社を辞めて実家に帰ってきてぶらぶらしてるお姉ちゃんと二人で海に向かう途中

サービスエリアでお姉ちゃんは自動販売機のハンバーガーをはふはふして

これがおいしいんだわ

と嬉しそう。


湿って丸まったほかほかのハンバーガーは

貝の様だった。 


「微小貝って、あの砂浜の砂に混じってる

あの米粒よりちっさい、ああいうやつ?

それに関する部活って変だね」 

「そうだよ」

 「集めてどうすんのソレ」

 「結構かわいいよ」

 「かわいいとな」


そんで一緒に採集に行くってなって

私たちは車で1時間半かけて

海浜公園にたどりついた。


季節はずれなので

人はほんとにまばらで

風が駆け巡ってる

そこらじゅうを。


私はさっそくしゃがんで

虫眼鏡とかも使って砂をさらさらどけたりして

微小貝を探した。


お姉ちゃんは

私はここでスマホをいじっているよ

と何かの記念碑みたいのに斜めに寄りかかっていた。

風で髪がすごい舞って面白い。


こうやってじいっと砂を眺めているのは本当に楽しくて

ざざぁ・・

と波の音はするし

風は涼しいし

太陽は暖かいし

眠くなる。


目の前には淡い色の砂に混じって

柔らかい薄桃色だったりする小さい貝がらが混じってたりして

めちゃパステル。


天国には砂浜

あると思うけどなぁ・・


ってうとうとしてたら

ずさっ!

と隣にお姉ちゃんが砂の上に寝転んできて

こうやってねっころがった方が探しやすいよね

と言って自分も探し始めた。  


「砂さー」

 「うん」

 「持って帰っちゃだめなのかね」

 「うん?」 

「いやそしたらうちにいる時でもいつでも探せるじゃん。

例えばペットボトル一杯分とか持ってけば学校でだって探せるじゃん」

 「・・」

 「そこまでじゃない?」

 「うーん」 

「そゆことじゃない?」

 「うーん・・」



波が

ざざぁ・・

ざざぁ・・

と遠くで鳴る。


少し綺麗な巻貝が見つかる。


 「こんな小さい貝なのにさ

種類があって同じ種類のものは

見た目が大小あれど一緒じゃん?

つまり同じ設計図を共有してるんだよね。

不思議だなあ。

種類って概念自体が不思議に思えるよなぁ。

それに生物は色々変化するとかいうじゃん?

サルが人間にとかさ。

でもこの小さい貝たちはただただ海に育まれて

ずっと昔からこのまんまだったかもしれないよね。

すんごい昔っからさ。

貝ってのはさ

中身が軟体動物でしょ。

てことはもしかしたらタコとかの親戚なのかね?

タコもタコツボみたいな

堅いある意味殻に入る習性あるし。

そうなるとこんな小さい貝の中に入ってたやつも

もしかしてすごい小さいタコだったりすんのかな」


私はそういうお姉ちゃんの色んな話を聞きながら

うん、うん、と答えていた。


お姉ちゃんは

この世はやっぱすごいなあ

と飽きたのか足を投げ出して海を眺めて言った。


私も、うん、と言った。


 「てかさあ」 

「うん」 

「会社やめちゃったりして、どうしよ」 

「うーん・・」


お姉ちゃんの方を向こうと思ったけど、向かなかった。


お姉ちゃんはひとり言のように何か言った。


 「    ・・っかなぁ・・」


 波の音が、鳴る。


(作・神楽坂景色)

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